試合運びは圧倒的だった。1Rには、相手の右ストレートをかわしてカウンターの左ストレートをヒットさせ、いきなりダウンを奪う。2R以降も相手の攻撃をかわしながら強烈な左ボディーをヒットさせるなど試合をコントロールした。
結局8Rを戦い抜き、判定3―0で勝利。キック時代の2018年6月に延長含む6Rを戦ったロッタン・ジットムアンノン戦を超える〝未知の領域〟となった7R以降も攻撃の手が緩むことはなくスタミナの不安は一蹴した。
公式ユーチューブチャンネル「前向き教室」で発信を行っている細川氏は「間違いなくレベルアップして、よりボクサーになっていると思います。上半身の筋肉も大きくなっていました」とまずは一定の評価。その一方で「でも、みんな知りたいのは『なんでKOできないの?』ってことですよね」と転向初戦となった4月の与那覇勇気(真正)戦に続く〝課題〟について言及した。
まず細川氏が指摘したのは、キックから転向したゆえのスタイル。それを「相手の隙を探すボクシング」と表現し、こう続ける。「このスタイルはディフェンスの〝空き〟をカウンターで狙うから、相手が積極的に攻めてきている時でないと(倒すのが)難しいんです。多分これって、ほかの格闘技だと効率がいい戦い方なんだと思います。脚も攻撃に使えるし、攻撃していい箇所も多いから、隙が生まれやすいしそれを突きやすい。でもボクシングは両手でしか攻撃できない上に、攻撃箇所が限られているんです。だから隙を探すスタイルは効率が悪くなってしまう」。攻撃対象が上半身の前面と側面に限られるボクシングでは、亀になって防御に徹した相手の隙を探すのは難しくなるというわけだ。
それを踏まえ細川氏は「だからボクシングはガードの上から殴るんです。井上尚弥(大橋)も(寺地)拳四朗(BMB)もそうやってガードを強烈に殴ることで〝空き〟を作っているんです。多分ほかの格闘技では効率が悪いんだろうけど、ボクシングではこうやって隙を作る方が効率がいい。そこに取り組めばKOが増えるのでは」と解決策を提示した。
また「彼の感性というか遊び心の部分。それをもう少し倒すことにフォーカスした方がいいんじゃないか」とも指摘。トリケラトプス拳などを見せていたキック時代ほどではないにしろ、この日も細かいステップなど観客の目を意識したような動きを見せた那須川。それが魅力であるとは認めつつも「正直『遊びすぎなんじゃね?』って思いました。楽しむのもいいけど、拳四朗や中谷(潤人=M・T)のような『終わらせてやる』っていう気概みたいなものをもっと出してほしい」と断じた。
とはいえ、初戦から成長を見せたのは事実。神童が次戦でどんな進化を見せてくれるか注目だ。
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Source: 筋肉速報
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