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華麗なるレスリング一家-。
父山本郁栄氏(73)を長とする山本家が、格闘家KIDさんをつくった。72年ミュンヘンオリンピック(五輪)代表の郁栄氏は日体大で指導するかたわら、子どもたちを英才教育。
姉と妹は世界女王、徳郁さんも数々のタイトルを手にした。
「父の夢をかなえたい」という気持ちが、3人を厳しいトレーニングに向かわせた。
60年代から70年代、日本のレスリングは黄金期だった。
64年東京から76年モントリオールまで4大会で金13個を含む21個の五輪メダルを獲得。
特に軽量級は全員が優勝候補だった。
グレコローマン57キロ級の郁栄氏も金を目指して五輪に臨んだ。しかし、5回戦敗退。順位さえつかなかった。
「やっぱり、五輪の金メダルだよ」。
91年に姉の美憂が世界選手権に初出場初優勝した後、郁栄氏は言った。姉妹で同選手権計7回優勝。
しかし、五輪に女子種目が採用されたのは04年アテネ大会から。
郁栄氏は待てず「柔道に転向させる」とまで言った。あと10年早ければ、山本家の悲願は達成されていた。
父の悔しさ、姉と妹のむなしさは、KIDさんも分かった。
高校時代に米国にレスリング留学、山梨学院大で大学王者になり、五輪は目前だった。
00年シドニー五輪を逃して格闘技に転向したが、08年北京五輪を前に復帰。それも「五輪で金メダルをとり、父の夢をかなえたい」思いからだ。
レスリングでも、格闘技でも、近くには常に父がいた。
「山本家」を代表して戦うことで、力以上の力が出た。厳しくも温かい父の声に導かれ、数々の伝説を残してきた。
「家族の力」を示してきた。「神の子」の意味を聞かれ「オレにとって、おやじは神」。尊敬と感謝を込めて言った。
「悲運の一家」とも呼ばれる。家族の願いだった五輪の金メダルには届かなかった。それでも「一家での戦い」を続けた。
KIDさんの病気も、家族で闘ってきた。
そんな強い絆を知るから、レスリング界も立ち上がって闘病を支えるための募金活動もしていた。
早すぎるKIDさんの死。しかし、その勇姿とレスリング愛に包まれた家族の姿は永遠に語り継がれる。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180919-00335216-nksports-fight
9/19(水) 9:05配信
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Source: 筋肉速報
KIDさん、神の子の意味「おれにとっておやじは神」